こんにちは、とあるです!
今回お話しするのは、『へルタースケルター』や『リバーズ・エッジ』の作者として知られる岡崎京子の同名漫画を、若手監督のホープ二宮健が実写化した映画、
『チワワちゃん』
(C)2019「チワワちゃん」製作委員会
です!!!
原作である『チワワちゃん』は短編集の名前でもあるのですが、今回映画化したのはそちらではなく、その中の表題作品としての『チワワちゃん』ということで、元のページ数はかなり少ないものとなっています。
その数なんと34ページ。
それを104分の映画にしたということですが…さてさて一体どんな仕上がりになっているのでしょうか。気になったのでさっそく観てきました。
この記事の目次
- 作品情報
- 主なスタッフ
- 主なキャスト
- イントロダクション
- 予告動画
- ネタバレ、結末
- 感想
- 犯人は誰だったのか?
- チワワちゃんの人物像
- モラトリアム
- MVチック
- 評価
作品情報
主なスタッフ
監督、脚本:二宮健
原作:岡崎京子
製作:間宮登良松、瀬井哲也ら/エグゼクティブプロデューサー:加藤和夫、岡本東郎/企画・プロデュース:岡田真/プロデューサー:山邊博文、行実良ら/音楽プロデューサー:濱野睦美/撮影:相馬大輔/照明:佐藤浩太/美術:小泉博康/録音:反町憲人/装飾:伊藤悟/スタイリスト:前田勇弥/ヘアメイク:中山有紀/サウンドデザイン:浅梨なおこ、野村みき/助監督:山下久義
主なキャスト
ミキ:門脇麦
チワワちゃん / 千脇良子:吉田志織
ヨシダ:成田凌
カツオ:寛一郎
ナガイ:村上虹郎
ユミ:玉城ティナ/キキ:仲万美/サヤカ:古川琴音/ハラダ:篠原悠伸/アキラ:上遠野太洸/サヨコ:松本妃代/クマ:松本穂香/シマ:成河/ユーコ:栗山千明/サカタ:浅野忠信
イントロダクション
ある若者グループのマスコット的存在で「チワワ」と呼ばれていた女性が、バラバラ遺体となって東京湾で発見される。
チワワの元彼や親友など残された仲間たちは、それぞれがチワワとの思い出を語り出すが、そこで明らかになったのは、チワワの本名も境遇を誰も知らないまま、毎日バカ騒ぎをしていたということだった。
映画.comより
予告動画
ネタバレ、結末

※この項は約2分ほどで読むことが出来ますが、映画『チワワちゃん』のストーリーが結末までネタバレされていますのでお気を付けください。
東京湾バラバラ殺人事件。未だ犯人が捕まらないこの事件は被害者の千脇良子、通称チワワちゃんがモデルとして著名なこともあり、メディアで連日報道されています。
雑誌のライターユーコからチワワの友達であるという理由で取材を受けるミキは、本名すら知らない間柄であった彼女について語り始めるのでした。
チワワと初めて出会ったのは事件の数か月前に友達数人と飲んでいた時。突然輪に入ってきたチワワに皆が戸惑っていた中、バーテンダーのシマが「VIP席にいる男のバッグに600万円がある。」という話を残していきます。
お金は欲しいものの及び腰になっていた仲間たち。リーダー格のカツオは新入りのチワワに冗談半分でお金を盗むよう命じます。すると彼女は臆することなくバッグを強奪し、夜の街を駆け抜けていったのでした。
翌朝、ニュースで昨夜の男たちが贈賄罪で逮捕されたという報道が流れると、散り散りになっていた仲間たちが再び集結。カツオの提案によってバカンスに行くことになったミキたちですが、そこでお金を湯水の如く使い、たった3日で切らしてしまいます。その後、彼らはすぐに元の生活へと戻っていくのでした。
しかし、チワワだけはその後も派手な生活を続けました。趣味でモデルをしているミキに影響され、自身もモデルとなった彼女は一躍人気者となっていたのです。旅行中に付き合っていたヨシダと別れ、現場で会った年の離れたカメラマンのサカタと付き合うようになったチワワ。ミキたちは次第に彼女と会うことがなくなっていきました。
それでも時折、仲間の前に現れていたようで、ミキが取材のためにかつての仲間たちに話を聞きに行くと、
お金に困っていたようで仲間の家を渡り歩いては居候をしていた。アダルトビデオに出演していた。ガラの悪い男たちとつるんでいた。という話や、
お金を借りに来た際の様子やチワワが新しく住むことになったマンションについては、仲間によって違った情報を得られ、ミキの知らないチワワの側面を多く知りました。
しかしミキへの取材が終わり、雑誌が発刊された頃、世の中を賑わせていたのはシンガポールで起きた連続爆破事件でした。チワワについての特集は小さなコーナーに留まり、大きな反響があった訳でもなく、犯人も捕まらないまま月日が過ぎていきます。
ミキはかつての仲間と再び集い、チワワの遺体が発見された埠頭へ向かうことに。そこには新しい遊び仲間であるクマちゃんの姿がありました。彼女は亡くなる2、3日前のチワワに会ったと言います。それは新しく出来た彼氏のために料理を作るのが楽しいと満面の笑みで語る、仲間が見た最期の姿とはまた違う姿だったのだそう。
チワワへの別れの言葉を動画に残したミキたちは思い思いの感情を胸に抱きつつ、その場を離れます。仲間を乗せ、走り出す車。ミキがふと外を眺めると、初めて会った夜と変わらない姿で駆け抜けるチワワの幻影を目にしました。
感想
犯人は誰だったのか?
こういう目線で本作を観た場合、おそらく肩透かしを喰らってしまうのではないかと思います。はっきり言ってしまうと原作でも今回の映画版でも、チワワを殺害した犯人は明らかにされていないんです。
本編では交際中に暴力をふるっていたというヨシダや、ミキたちと会わなくなっていったあとでつるんでいたガラの悪い連中が出てきますが、いずれも彼が犯人だという確証は出来ません。クマちゃんが話したチワワの新しい彼氏その人であったり、まったくの見ず知らずの人物である可能性もあるわけです。
サスペンスではなく、ヒューマンドラマですからね~…。モヤモヤしたまま終わるのは嫌いだ~って人には合わない話だと思います( ̄▽ ̄;)
チワワちゃんの人物像
作中でのミキたちは、チワワに対してそれぞれ色々な思いを持っており、そんな各々の感情からなるフィルターを通してみた人物像を持っています。そしてそこにはその時見た事実も色濃く反映されているんですね。
ではチワワちゃんとはどんな人物だったのでしょうか?
自分は傷つきやすく繊細で、今を生き抜こうと必死になるあまり不器用な生き方しか出来ない人だったのではないかな~…という印象を受けました。
…長いですね。でも人ってそんなものじゃないでしょうか。熱い男として知られる松岡修造にも、プロポーズの言葉が「結婚したら俺は100%幸せになれる自信があるけど、君を幸せにする自信はない。」であるといったように亭主関白な面があるそうですよ。
チワワが亡くなったことによる両親、同級生へのインタビューシーンや、ミキたちの中の数人の話からは彼女の優しい人となりが聞いてとれます。しかし性に奔放で自由すぎる立ち振る舞いがあったのも事実。

自分はヨシダと交際していた時の彼女にこそ、人物像を推し量る重要な要素があったように思いました。一途に愛し、幸せの絶頂にいたチワワがバカンスの最中に浮気するヨシダを見た時、適当な男にいきなりキスを仕掛けに行くのです。
この行動は決して深く考えられたものではないでしょう。彼女には傷ついたとき、衝動的に行動をしてしまう癖があるようですね。生きるのが下手だとも言えます。
明る過ぎるテンションはおそらく気質じゃなくて、二次的に生まれた性格なんじゃないかな。弱い自分を隠して上手く生きていくための処世術として。中盤でサカタに投げかけられた芯を突くような質問に泣き崩れるシーンからもこれは垣間見えました。
必死に取り繕って、もうどうしようもできなくなって、打つ手打つ手がすべてが自分の首を絞めていく。そして幸せを握りしめられないまま、短い生涯を終える。彼女にはこの社会の中で上手く生きていくことができないほどの不器用さと、繊細さがあったのだと思います。
モラトリアム
モラトリアムとは、
E.H.エリクソンの提案した精神分析学の用語。本来は「支払い猶予期間」の意であったのを転じて,社会的責任を一時的に免除あるいは猶予されている青年期をさす。
生きがいや働きがいを求め,発見するための準備を整える一方,自分の正体,アイデンティティを確定できず,無気力,無責任,無関心など消極的な生活に傾きながら,自我の同一性を確立してゆく。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
のことです。そして現代人には、この猶予期間を引き延ばして大人になろうとしない「モラトリアム人間」が多くいるそう。その背景には、急速に変化する社会の中でアイデンティティを見つけきれないことが挙げられているみたいですね。
これまではチワワを中心にお話ししてきましたが、門脇麦演じる主人公のミキ、セリフ自体は少ないものの「お前…なんか違う。」の口説き文句が強烈な成田凌演じるヨシダ、村上虹郎演じる気弱なナガイなど、それぞれがモラトリアムという過渡期において、悩み変化していくドラマがありました。
特にミキ。元々ヨシダと付き合っていたのにぽっと出のチワワに取られてしまい、趣味ながらもしっかりやっていたモデル業まで彼女に追い越されてしまう始末。自分の人生とは、自分は何者なのかという苦悩を、ミキを演じた門脇麦はよく表現できていたと思いました。
MVチック
最近増えましたよね。3分ぐらいのドラマパートがあって、そのあとに歌が流れ始めるMV。歌を聴きたい人にとっては早くしろ!!以外の何物でもないとは思いますが、物語に没入しながら聴く歌というのは、普通に聴くのとは違った深みがあります。
『チワワちゃん』の冒頭はまさにそんな感じで、ミキたちとチワワが初めて出会う場面を淡々と描いたのち、現金の入ったバッグを強奪したチワワが夜の街に駆け出したところでPale Wavesの「Television Romance」が流れていました。
自分は結構この始まり方が好きで、人生を謳歌している姿にいずれ来る彼女の没落を思うと、これからどうなっていくのだろうという物語への期待感を抱きましたね。
調べてみたら二宮健監督はDEAN FUJIOKAの「Let it snow!」、BiSHの「本当本気」などのMVも監督しているようです。そのいずれもライトを多く取り入れた構成だったり、「本当本気」においては深夜の渋谷を駆け抜けるという本作と似たシーンがあることから、そこで培った経験が生きているのかなと思いました。観ていてとてもスタイリッシュに映りましたよ。
しかし、ちょっと音楽とダンスに頼るところの回数が多すぎた感は否めないですね…。中身がスカスカだというコメントが散見されているのにも納得。34ページの原作を映画化するにあたって、ボリュームの面で大丈夫かなと思っていましたが、音楽とダンスではそれを埋めきれなかったようです…。
評価
MVチックなシーンから始まるところにこれから始まる物語の期待感を抱いたり、本編での各登場人物の行動や思いに深く思いを巡らすヒューマンドラマとしての良さを感じたものの、
やはり34ページの原作を104分の映画にするのは難しかったか…と思わざるを得ない所も多々あったように思う『チワワちゃん』
そうですね…点数に表して評価するなら~…
74点!!
今回お話しした映画『チワワちゃん』は2019年6月12日よりDVD&ブルーレイの販売を開始。なお同日よりTSUTAYA、GEOなどのショップでのレンタルや、TSUTAYA TV、ビデオマーケットなどの動画配信サービスで配信を開始しています。気になった方はぜひ一度観てみてください。
それでは今回はこの辺で。本記事に対するご意見、ご感想はコメント欄によろしくおねがいします。ではでは!