こんにちは、とあるです!
今回お話するのは、ヘレン・ミレン、ドナルド・サザーランド主演の映画、
『ロング,ロングバケーション』
(C)2017 Indiana Production S.P.A.
です!!!
長い、長い休暇!いぇーい!!…とまぁ、邦題だけ見るとそうなんですが、認知症を患った夫と、末期のガン患者である妻が人生の最後に二人でヘミングウェイの家に向かうロードムービーなんです。
この記事の目次
- ストーリー
- 予告動画
- 人物紹介
- ネタバレ
- 感想
- 原題「The Leisure Seeker」について
- 2人の名優による緻密な心理表現技術
- 人生の様々なシーンで見返したい
- ラストは評価が別れるか?
- 最後に
ストーリー
夫婦生活は半世紀を迎え、子どもたちも巣立ったことで人生の責任も果たしきり、夫婦水入らずの自分たちだけの時間を過ごすことができるようになった。
ジョンが敬愛するヘミングウェイが暮らした家のあるキーウエストを目指し、愛車のキャンピングカーで旅に出た2人は、毎晩思い出のスライド写真でこれまでの人生を振り返りながら、ひたすら南を目指して進んでいく。
映画.comより
予告動画
人物紹介
・エラ(ヘレン・ミレン)
今作主人公のひとり。ジョンの妻。
快活な性格だが、歯に衣着せぬ物言いやおしゃべりすぎるのがたまにきず。
その見た目や様子からは想像できないものの、末期のガン患者であり、常に薬を持ち歩いている。
・ジョン(ドナルド・サザーランド)
今作主人公のひとり。エラの夫で元文学教師。
アルツハイマー型認知症を患ったことにより、仏頂面で堅物な性格になってしまっているが、
本来はハンサムで、まじめな性格ながらも冗談を言う魅力的な人だった。とエラは語る。
・ジェーン(ジャネル・モロニ―)
ジョンとエラの娘。大学で教鞭をとっている。
・ウィル(クリスチャン・マッケイ)
ジョンとエラの息子。
ネタバレ
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感想&レビューを読む
ある日、ジョンとエラは人生の最期を締めくくる思い出作りにと、レジャー・シーカーと名付けた整備不良のオンボロキャンピングカーに乗って、ジョンの敬愛する小説家ヘミングウェイの生まれた家を目指し始めました。。
途中、昔訪れたことのある歴史村に寄った時には、そこで出会ったジョンの元教え子に認知症のはずのジョンがハキハキと楽しげに話すのを見たり、
ダイナーで朝食をとっていた時には、子どもたちからの帰宅を促す電話に応対していたエラを置いて、先にキャンピングカーで走り出したジョンを地元のバイカーのバイクに2ケツして追いかけたり、
強盗に襲われるも、ショットガンを構えて応戦したり、
認知症のジョンに振り回されて散々な旅ですが、色々感じるものはありながらもエラはジョンと旅ができることを楽しんでいました。
ある日の夜、ジョンはエラに言いました。
「もしもし、そこのお方。エラがどこに行ったか分かりますか?」
抗がん剤の副作用で髪がないのをかつらで隠していたエラ。
そのエラがかつらを脱いだことで、ジョンはエラだと認識できなかったのです。
自尊心を傷つけられたエラはキャンピングカーを飛び出してしまい、ジョンは慌てて後を追いかけました。
座り込むエラをよく見て、やっと自分の妻であることに気づき、もう一度話しかけました。
「本当に君か? 」
「もちろん私よ、あなたは? 」
エラは答えました。
「私だ、ジョンだよ。」
「違うわ、ジョンは若い教師よ、魅力的でハンサムで教養がある。あの人を返して。あなたが奪ったあの人を。」
「できることならそうしたい。だが彼は私からも奪われた。」
愛する夫が別人のようになっていく。病によるものと知りながらも変化を受け入れられないエラ同様、ジョンも自分が自分でなくなっていく不安や焦りを感じていたのでした。
常日頃、ジョンにはエラに対して耳にタコができるほど言っている約束事がありました。

「もし私を施設に入れないといけないような時が来たら、ショットガンを握らせ、引き金を引いてくれ。そしてキスを2回して欲しいんだ。」
この日の夜もジョンにそう言われたエラがあくる朝、目を覚ますと、ジョンにショットガンを向けられていました。
その理由はなんとエラの初恋の相手ダニエル・コールマンのところに連れて行けというもの。
数十年も前のことと呆れるエラですが呆れすぎて開き直り、ダンの住む老人ホームに寄ることにしました。
ホームに着いた途端、利用者の部屋に押し入っては、隠し持ってきたショットガンを向け、ダンかどうかを尋ねるジョン。
エラは万が一のことを考え、弾を抜いてきていましたが、当のダンも認知症を患ってエラを覚えていなかったことで女としてのプライドが傷ついたエラは、ジョンに発砲を許可しました。
しかし二人は騒ぎに気付いた職員に取り押さえられ、施設を追い出されてしまうのでした。
次の日の朝、いつものようにダイナーで朝食をとる二人。
注文を取りにやってきたウェイトレスにいつものように大好きなヘミングウェイの詩のうんちくを語るジョンでしたが、途中でその詩すら出てこなくなってしまいました。
一方のエラも食欲がなくなってきており、二人の症状が悪化してきていることは明らかでした。
ヘミングウェイの家まであと少しとなった所でまたもやハプニングが起こります。
ジョンがエラを隣人のリリアンだと思い込み、話しかけてきたのです。
そのあまりに親しげさに、エラは自分をリリアンと偽って話に乗ることにしました。
そしてそこで初めて、ジョンがエラに内緒で会っていたことや、その関係が2年になることを知るのでした。愛する夫が自分の知らないところで隣人と会っていることにエラは悲しくて悔しくて、ジョンを老人ホームに捨て置いて泣きました。
しかし、泣き疲れたエラはそれすらも許して前に進まないと行けないと考え、ジョンを連れ戻しに行きました。
一時はどうなることかと思われた2人の旅。
しかしなんとかヘミングウェイの過ごした町に来ました。
目的の家はもうすぐです。
浜辺に佇み、美しい海を眺めながら抱き合って、ジョンは言いました。
「ここは天国?バーガーはあるかな?」
と。
期待を胸にヘミングウェイの家へ向かった2人。
エラはジョンの大好きなヘミングウェイの家で一緒に、ゆっくりとその歴史を堪能することを楽しみにしていました。
しかしその期待は脆くも崩れ去りました。
ヘミングウェイの家は騒がしい観光施設になっており、庭では結婚式まで開かれていたのでした。
大きく落胆したエラは、今までの無理がたたって昏倒してしまい、救急車で搬送されていきました。
しかし余興のダンスに混じって1人楽しんでいたジョンはその事にしばらく気付くことはありませんでした。
次第に何か足りないと感じるジョン。
捜し物が何かもわからず徘徊するジョンはエラのバッグを拾いました。
中のリップを出し匂いを嗅ぐジョンはそこでようやく妻を思い出し、病院へ向かうのでした。
ジョンが病室に訪れるとそこには呼吸器を付け、管で繋がれたエラがいました。
かなり衰弱しているエラですが、ジョンが病院から出ようと提案するとそれに乗ることにし、ようやくいつものキャンピングカーに戻ってきたのです。
その夜、失禁してしまったジョンの股をエラが拭いているとジョンの“モノ”が大きくなっていることに気が付きました。
「臨戦態勢を解いて。」
と笑いながらたしなめるエラにジョンは、
「試してみないか。」
と言い、そのままエラに前のめりにもたれかかって挿入しました。
エラは自ら腰を動かし、ジョンの快感を促そうとしますが
「このままでいい。二度と離れないでくれ、約束だ。」
と言われ、2人は繋がりを感じたまま静かな時を過ごしました。
先に眠りについたジョンをよそに、エラは手紙をしたためていました。
手紙を書きあげたエラは睡眠薬を飲み、車の床を外して眠りにつきました。
朝、隣で寝泊まりしていたキャンパーが異変に気づき、ジョンとエラのキャンピングカーを訪れ、扉を開けてみると車内からはもくもくと黒い煙が立ち上りました。
昨夜、エラが車の床を外したのは、このキャンピングカーが整備不良で排気ガスが漏れ出ていることを知っていたため。
エラは一酸化炭素中毒による自死を選んだのでした。
自死の前、エラがしたためていた手紙はジェーンとウィルに宛てたものでした。
手紙には、黙って先に逝くことの謝罪や、2人が自死の責任を感じてしまうことの懸念、そしてそれを感じる必要が無いほど、自分たちの人生の最期が充実したものであったことが記されていました。

それを読んだジェーンとウィルは涙ぐみながらも、2人の行動に納得し、すっきりとした気持ちで、両親の葬儀に参加するのでした。
感想
原題「The Leisure Seeker」について
邦題では『ロング,ロングバケーション』となっている今作ですが、原題は『The Leisure Seeker』といいます。
ではそのレジャーシーカーとはなんなのか、調べてみたところ
「楽しみを見つける」という意味だそう。
2人の愛車のキャンピングカーにぴったりな名前ですね。
邦題は2人の永遠の休暇を匂わすものとなっているように思われますが、自分は原題の方が2人の性格やストーリーに合っているような気がして好きですね。
2人の名優による緻密な心理表現技術
2006年には映画『クィーン』でアカデミー主演女優賞を獲得したヘレン・ミレン。
今作では溌剌とした性格で明るく振る舞うものの、末期のガン患者であるエラを演じました。
作中ではそのエラが持ち前の明るさを維持できなくなるほどの、大きな悲しみを味わう出来事が度々起こります。
自分はエラを演じるヘレンの、愛する夫の姿は目の前にいるのに、
中身が別人になっていくと感じた時の喪失感や、焦りといった演技にグッと引き込まれてしまいました…!
続いて『24-TWENTY FOUR-』シリーズで主人公ジャック・バウアーを演じたキーファー・サザーランドの父親でもあり名脇役として知られるドナルド・サザーランドの演技について、
作中で認知症の夫ジョンを演じた彼の良かった点は、なんといっても表情の演技がとてもうまかったこと。
垂れ下がった口角や不安そうな表情など認知症特有の雰囲気をよく再現しているように思いました。
また、元のジョンが一時的に「帰ってきた」シーンでは、鑑賞者の知らない、認知症になる前のジョンを垣間見ることができるのですが、それが次第にまた戻っていく様子がまさに圧巻で、表情1つで別人のようになっていくんですよね…本当にすごい…。
実は名前は知っていたものの2人の演技を見たのは初めてだったのですが、これからも活躍を追っていきたいなと思いました。
人生の様々なシーンで見返したい
皆さんはQOL(Quality Of Life)やSOL(Sancity Of Life)の考えを知っていますか?
QOLとは、生命の質のことであり、
「人間としていかに生きているか」
「生きている状態の質」
を重視すべきという考え方や概念のことで、
SOLとは、生命の尊厳、つまり生命は尊いものであり、いついかなる状況でも死を選ばず生を選ばなければならないという考え、概念のこと。
この2つの考えは安楽死などを巡ってしばしば対立しています。
この作品では、ジョンとエラが本来受けるべき治療を放棄して、旅をするのと対照的に、ジェーンとウィルは帰って治療を受けることを再三要求していました。 この構図はQOLとSOLの考えの対立の構図と同じですね。
そういう面で、本来重くとらえるはずの病気のことをあえて明るく描きつつも、向き合うところはしっかりと向きあっている今作では、観ている側に人生とは、死とは何かを一度深く考えてみるきっかけを与えるような作品に仕上がっているような気がしました。
人生の様々なステージで見返したい作品ですね。
ラストは評価が別れるか?
物語の最後の行動はジョンの、
「二度と離れないでくれ。約束だ。」 という発言を聞いて、自分が最期まで添い遂げられないことを悟っているエラがおこなったものでした。
ストーリーを最後までご覧になった方の中でも、このラストの行動は、
エラはジョンの約束を遂行したのみだ。その判断は愛に溢れている。きっとジョンもこれで本望だ。という意見や、
反対に、ジョンが認知症で判断能力に乏しいからといって、妻であるエラの独断でジョンの命まで左右させてしまっていいのか。これは殺人だ。傲慢だ。と、
賛否両論のあるものだったのでは。
自分はどちらかというとQOLの考えには賛成の立場なので、この結末はこれでよかったのではないかなとは思います。でも、うーん…確かに引っかかるものはありますけどね(-_-;)
最後に
今作はYouTubeで予告動画巡りをしていた時に出会った作品なんです。
その時には、「気になるから観ておこ。」程度だったのですが、まさかここまで考えさせられる映画だとは思っていませんでした。
笑って泣ける。それを体現した映画だと言えます。
既にDVD発売、レンタル開始もされているので良かったら、手に取ってみて観てみてください!