ネタバレ&感想!映画『ラバー』:殺人タイヤ駆ける“実験的”B級ムービー

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こんにちは、当ブログ『映画鑑評巻』の管理人“とある”です!

今回、お話しするのはフランスのミュージシャン兼映画監督であるカンタン・デュピューが監督を務め、スティーヴン・スピネラ出演のコチラの映画!

ラバー

(c)realitism films-elle driver-arte france

突如としてこの世に生を受け、念力によって次々と人間を爆殺していく恐怖の“殺人タイヤ”を描いたコメディ・ホラー(?)となっております!

まずは作品情報から~…どうぞー!!

※当ブログでは一部の項にネタバレ解説を載せていますが、このまま読み進めても目に入らない仕組みとなっております。未鑑賞の方は評価の項を鑑賞の目安などにお使いください。

この記事の目次

  1. 作品情報
    1. 主なスタッフ
    2. 主なキャスト
    3. ストーリー
      1. イントロダクション
      2. 予告動画
      3. 結末までのネタバレ
  2. 評価
  3. 感想(ネタバレあり)
    1. あまりに実験的な前衛ムービー
    2. 人体爆発のレベルは高い
  4. 最後に

作品情報

主なスタッフ

監督・脚本・撮影・編集・音楽:カンタン・デュピュー

・『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』(2018)、『リアリティ』(2014)などの映画を監督。Mr.Oizoという名義で「フラット・ビート」などの曲を作るなど、エレクトロミュージシャンとしても著名。

製作:グレゴリー・ベルナール、ジュリアン・バーラン

主なキャスト

チャド保安官:スティーヴン・スピネラ

・デンゼル・ワシントン主演『バーチュオシティ』(1995)でリンデンメイヤー博士役を務める。その他の出演には『ある女流作家の罪と罰』(2018)のポール役など。

経理担当の男:ジャック・プロトニック
車椅子の男:ウィングス・ハウザー

清掃婦:タラ・ジーン・オブライエン
ザック:レミー・ソーン

ストーリー

イントロダクション

ここは荒野のど真ん中。道端に集められた観衆は「どの映画にも理由なき重要な要素がある」と説く保安官のチャドを見ていた。

彼が去った後、経理担当の男に手渡された双眼鏡を覗いた彼らは、遠くの方に、ひとりでに動き出す古タイヤを発見する。

名をロバートという、そのタイヤ。観衆は皆、奇妙な彼の動向を追うことに。

すると翌日のこと、ロバートは突如として遭遇した生き物を念力で爆殺する、恐怖の殺人タイヤとしての覚醒を遂げるのだった…。

予告動画

結末までのネタバレ

ラスト、結末までの簡単ネタバレ。
ポチッ!とすると下に開きます。

観察を続ける観衆。しかし翌日、彼らは経理担当の男に毒入りの料理を振る舞われ、死亡。食べなかった車椅子の男のみが生き残る。

またそれとほぼ同じ頃、ロバートは侵入したモーテルにてシャワーを浴びたり、清掃婦を爆殺したりと自由気ままに過ごしていた。

彼の凶行を目撃した少年ザックは保安官事務所に通報するものの、担当のチャド保安官は怠そうに聴取するだけ。捜査はすぐ打ち切りに。

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戸惑う同僚たちはチャド保安官に質問するが、彼は「この物語は虚構だ。俺を撃ってみろ」と答え、清掃婦の死体をも確認させる。

数秒後、荒野に響く銃声。チャド保安官は何故かピンピンしている。しかし、彼の予想とは違い、清掃婦は死体のままだった。

死者は生き返らない。その当然の結果に驚くチャド保安官。傍に来た経理担当の男に「まだ観ている奴がいる」と耳打ちされた彼は慌てて捜査の再開に動くのだった。

(c)realitism films-elle driver-arte france

捜査再開後、清掃婦の雇い主を聴取するチャド保安官。しかし、その人物までもがロバートに殺害されてしまったことを受け、彼は事件に本腰を入れ始める。

一方その頃、経理担当の男は車椅子の男を何としても始末しようと努力を重ねていた。彼がチャド保安官に耳打ちしていた“観ている奴”というのはこの男のことだったのだ。

だが車椅子の男は彼の振る舞う毒入りの料理には手をつけず、観察も止めない。ロバートはこのやり取りの間も人を殺してまわった。

(c)realitism films-elle driver-arte france

突如、この世に生を享けた殺人タイヤ、ロバート。しかし、彼にも消滅の時が訪れる。

今まで観客として事の成り行きを見守っていたものの、ある時、チャド保安官のグダグダな捜査に対して注文をつけた車椅子の男。

すると、実行中だった囮作戦の失敗に苛立ったチャド保安官はロバートの潜伏する家に向かい、彼にショットガンを見舞ったのだ。

チャド保安官はゴム切れとなったロバートの死体を「これはないだろう!」と憤る車椅子の男に投げ渡し、撤収していった。

しかしその後、家からはひとりでに動く三輪車が出てきた。彼は車椅子の男を爆殺し、街を闊歩。あとには他のタイヤたちも追従していくのだった。

場面が変わり、再び理由なき重要な要素を説くチャド保安官。だが以前とは違い、そこに観客たちの姿はなかった。

(c)realitism films-elle driver-arte france

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評価

映画『ラバー』に対する、僕の個人的評価(満足度)は…

とある

5.0
です。独特な雰囲気…。

ひとくち感想

タイヤが人を殺めるという奇抜な設定には驚かされましたが、本編はそれに反して平坦かつスローペース…少し眠たくも感じられてしまいました。メタっぽい内容の味わい深さこそあれど、ビジュアル通りのB級感を期待する人は肩透かしを食らっちゃうかも?

感想(ネタバレあり)

あまりに実験的な前衛ムービー

そのジャケット1つを見ても、強烈で、芳醇(?)な、匂い立つほどのB級臭をひしひしと感じさせてくれる本作。

ですが、いざ本編を観てみるとタイヤによる殺人録は程々に、散りばめられたメタ要素と、掴めない会話劇とが淡々と描かれる、異様な前衛ムービーとなっていました!!

そして本作を前衛たらしめていたのが『ラバー』という映画の中で展開されていく映画と、その鑑賞者の存在でしょうねー。

「No reason.(意味は無い)」という言葉を皮切りに『ある愛の詩』などの映画を引用し、解説を始めるチャド保安官や、彼に付き添うメガネの男(役名はAccountant=経理担当)

また経理担当の男に双眼鏡を手渡された観衆たちはロバートの物語が作り物と知った上で鑑賞(チャド保安官は出演も)していましたが、他の登場人物はそうとは知らない様子。

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これは推測ですが、僕としては本作に登場する彼らには裏の設定があるように感じられ、

チャド保安官は『ラバー』の中で展開されている映画(※以降、作中の映画)の出演キャラであり、且つそれが作り物と知っているキャラ。

経理担当の男は作中の映画の製作サイドなどの人間、観衆は作中の映画を見に来たお客さんなのではないかとも思ったり。

そのため本作全体のストーリーをなぞってみると、


ラバー』の中で描かれる映画の解説(?)
  • チャプター1
    手渡された双眼鏡を覗く観衆

    上映時間となり、鑑賞を始めたお客さん

  • チャプター2
    毒入りの料理を振る舞う経理担当の男

    ストーリー上の不都合を隠すべく、派手な味付けを施した製作サイド

  • チャプター3
    毒入りの料理を食べ、死亡する観衆

    あまりの駄作に観る気を失うお客さん

  • チャプター4
    料理を食べず、ロバートの物語を見続ける車椅子の男

    派手な味付けに惑わされず、最後まで映画の中身をしっかり観ようとしたお客さん

  • チャプター5
    捜査に文句をつける車椅子の男

    作中の映画の出来の酷さを批判したお客さん

  • チャプター6
    観衆不在のまま、話し出すチャド保安官

    作中の映画の酷さが知れ渡り、お客さんの入らなくなった映画で喋るキャラクター

…といったような流れだったのではないかと思いましたねー。

とはいえ、カンタン・デュピュー監督が用意した予防線的な「No reason.」発言によって、「いやいや、この映画はその推測すらも無駄な“本当に意味の無い映画”だよ」と躱すことも出来るという…。

うーん…もしそうだとするならば、人間が考える葦であることを逆手に取ったユニークな仕組みだなと思う反面、ちょっと僕には実験的過ぎて面白みに欠ける内容に思えてしまいましたね…。

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人体爆発のレベルは高い

結局、この映画を面白い面白くないの線引きで語ること事態、ナンセンスなんじゃないかと思い始めてるんですけど、

実験的演出を除いた、殺人タイヤ“ロバート”の部分だけで評価した場合に本作がどうかというと、コチラもあまり面白いものではなかったですね…ww

結構、本気で寝落ちしちゃいそうなシーンが多くありました。

表情の分からない動くタイヤなど生理的な恐怖を感じて当然なのに、ホラー的な描写で描いていたのは『スキャナーズ』ばりの念力爆殺くらいしかないし(人体爆発は結構凝ってて◎)

あとはロバートが鏡を見て身だしなみを意識していたり、能天気なBGMに揺れてゴロゴロ転がってたりと最早ちょっと可愛らしくも思えてくる描写ばかりで…。

本作の全体を総括してみると、やはり不思議さの前面に出た奇妙な作りの映画って域を出ていないような。

鑑賞後もモヤモヤとして十分に噛みきれないこの感じ、そして味わったところで「うーん」なストーリー、例えるならば、まるでゴムのようだともいえます。

一度味わってみる分にはともかく、「よし、次も味わってみよう!」とは残念ながら思うことの出来ない映画でした…。

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最後に

今回お話しした、この『ラバー』という映画。本編はどことなく前衛的で、僕としては良い意味でも、悪い意味でも意表を突かれる映画体験となりました。

カンタン・デピュー監督が携わった他作品のレビューを覗くと「○○ということ…か?」というコメントが多く見られたので、この独特な作風が監督の味…なのかもしれませんね。

ということで今回はここまで。本記事に対するご意見、ご感想などありましたら、ぜひぜひコメント欄の方へ。よろしくお願いしまーす!

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