こんにちは、とあるです!
今回は大人気ミステリー小説「その女アレックス」などの著者ピエール・ルメートルの同名歴史小説を、出演者兼監督であるアルベール・デュポンテルが監督し、映画化した作品、
『天国でまた会おう』
(C)2017 STADENN PROD. – MANCHESTER FILMS – GAUMONT – France 2 CINEMA
についてお話ししていきます!
予告動画から物語の世界観に引き込まれ観ることを決意していた本作ですが、自分の住んでいる愛知県でもなんと2館でしか上映されないということで、名古屋PARCOの東館8階にある「センチュリーシネマ」さんにて鑑賞してきましたよ~。
ここは初の映画館だったのですが、上映までまったりとくつろげるカフェが併設されたアットホームで居心地のいい映画館でした!
それでは前置きはここまでにまずは作品情報からどうぞ!
この記事の目次
- ストーリー
- 予告動画
- スタッフ・キャスト
- スタッフ
- キャスト
- あらすじ、ネタバレ
- 感想
- 美しい仮面とパリの情調
- 権力者相手に大立ち回り…だが?
- ハイクオリティな戦争シーン
- 数奇な運命の巡り合わせ
- 評価
ストーリー
1918年、休戦目前の西部戦線。生き埋めにされたアルベールを救ったエドゥアールは、その時に顔に重傷を負ってしまう。
パリに戻った二人を待っていたのは、戦没者は称えるのに帰還兵には冷たい世間だった。
仕事も恋人も失ったアルベールと、生還を家族にひた隠しにするエドゥアール。そこに、声を失ったエドゥアールの想いを“通訳”する少女が加わった。
一度は負けた人生を巻き返すために、彼らは国を相手にひと儲けする大胆な詐欺を企てる。
だが、そこには隠された本当の目的があった──。
天国でまた会おう公式サイトより
予告動画
スタッフ・キャスト
スタッフ
監督、脚本:アルベール・デュポンテル
原作、脚本:ピエール・ルメートル
製作:カトリーヌ・ボゾルガン 撮影:バンサン・マチアス
美術:ピエール・クフェレアン 衣装:ミミ・レンピツカ
キャスト
エドゥアール・ペリクール:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート(『BPM ビート・パー・ミニット』)
アルベール・マイヤール:アルベール・デュポンテル(『つつましき詐欺師』、『アレックス』)
ルイーズ:エロイーズ・バルステール
プラデル:ローラン・ラフィット(『エル ELLE』、『ミモザの島に消えた母』)
マルセル・ペリクール:ニエル・アレストリュプ
マドレーヌ:エミリー・ドゥケンヌ
ポリーヌ:メラニー・ティエリー
※太字=役名、細字=俳優名。括弧内は主な出演作。
あらすじ、ネタバレ
※この項を飛ばして感想を読みたいという方は、
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感想の項を読む

1920年11月、モロッコの憲兵隊に捕まったアルベールは友人エドゥアールと起こした詐欺事件についての取調べを受け、2人が知り合った経緯である第一次世界大戦での出来事から供述を始めました。
彼らの上官であったプラデル中尉は血の気が多く、自らが出した偵察を敵国の仕業に見せかけて殺し、戦いを煽っていました。その企みを知ったアルベールは彼に粛清されそうになりますが、逃亡中に穴に落ちてそのまま生き埋めになってしまいます。
それを救い出したのが戦友であり大富豪の息子エドゥアール。しかし彼はその直後の爆撃に巻き込まれて顔の下半分を失ってしまい、病院のベッドで休戦を迎えることに。
せっかく一命を取り留めたエドゥアールですが、仲間たちが次々と復員していっても父との確執や怪我への絶望感を理由に家族の元に戻るのを拒み、付き添いのアルベールに自らを殺すようせがみます。
アルベールは彼の嘆願を無視することも、ましてや殺すことも出来ずに、彼の家族には戦死を偽装して町の女の子ルイーズと共に新しい生活を始めることにするのでした。
そんなある日、アルベールが帰宅するとエドゥアールは美しく奇抜な仮面を付けて絵を描いていました。戦時中から彼の芸術的センスに気付いていたアルベールはワクワクしてその絵を見ましたが、そこには戦争をモチーフにしたありふれた絵ばかりでガッカリ。
しかしこれは「フランス全土で戦争記念碑の需要が高まっている」という記事から想起した、国や戦争、さらには父への復讐ともいうべき計画のための“道具”だとエドゥアールはいいます。
この絵をもとに記念碑のカタログを作り、発注と入金を同時に行わせるシステムにすることでお金だけを持ち逃げする、いわゆる架空事業を行うというのが彼の考えなのでした。
これを聞いたアルベールはびっくり。こんなのは国家への冒涜だと罵ります。しかし生活費やエドゥアールの薬代などで現状は困窮しており、渋々計画に参加することに。
そしてその中で戦後、埋葬業者の社長になったプラデルが杜撰な管理体制を賄賂で揉み消して財を成し、エドゥアールの姉マドレーヌとも結婚していることを知った3人は彼への復讐も同時に進めるのでした。
プラデルに対しては堅物な役人に告発することで現場視察を差し向けて失脚させ、計画していた架空事業では大儲け。裕福な資産家が賞金を出している戦争記念碑の公募でも優勝しました。
計画を成功させた3人は事前に決めていた高飛びの日まで前祝いのように派手な生活を送っていました。しかしある晩のこと、鳥を模した仮面を付けたエドゥアールが痛み止めのモルヒネを打って微睡んでいると、そこに一人の人物がやって来ます。
それはなんとエドゥアールの父マルセルでした。実は多額の賞金をかけて戦争記念碑の公募をしていた資産家というのは彼だったのです。
マルセルは応募されてきたデッサンの中に遺品として残っていたエドゥアールの絵にあるのと同じサインを見つけ、息子が生きていることを確信。娘婿のプラデルを使って居場所を探し出していたのでした。
しかしマルセルは目の前にいるのが実の息子であると知りつつも、応募者の名前が偽名だったことを理由に、過去の振る舞いの謝罪や芸術の才能がとても素晴らしいものであることを伝言という形でエドゥアールに託します。
それを聞いたエドゥアールは仮面の中から涙を流して父を抱きしめ、長年の対立はここに終結します。しかし抱擁を終えたエドゥアールは「また天国で」と言葉を遺し、テラスから飛び立っていくのでした。
アルベールの供述が終わったことを知るとこれまで神妙な面持ちで話を聞いていた位の高い憲兵が突然部下を取調室から締め出し、電話線を故意に切ったり、偶然を装って手錠の鍵を置いて外出しようとし始めます。
これは罪には目をつぶるから早く逃げろという彼からのメッセージでしたが、アルベールはまさかの行動に驚いて何も出来ずにいました。するとその憲兵は机に飾られた写真立てを見ながら、こう言うのでした。
「プラデルが偵察に出したという兵士の名前をもう一度聞かせてくれ。」
アルベールは
「テリウー。」
と彼の名前を答えます。
それを聞いた憲兵はアルベールに見えるように写真立てをひっくり返し、中に飾られていた写真を見せました。するとそこにはプラデルの奸計で戦士したテリウーの姿が。彼はこの憲兵の息子だったのです。
アルベールは彼の好意に甘えて部屋を出ると、ルイーズ、そして詐欺を働くうちに出会ったマルセルの召使いポリーヌとともにモロッコの町を歩き始めるのでした。
感想
美しい仮面とパリの情調
本作の舞台は第一次世界大戦が休戦したばかりである20世紀初頭のパリ。
街ゆく人を見てみると男性はお洒落なスーツにびっちり撫でつけた七三、口ひげ。女性はフィンガー・ウェイブのボブカットにクローシェ帽など当時流行った装いで、
(C)2017 STADENN PROD. – MANCHESTER FILMS – GAUMONT – France 2 CINEMA
エドゥアールの父であり資産家のマルセルが住む豪邸には、それはもう見るからに高そうな品のある家具がズラリと並んでいます。(庶民の語彙力よ…)
(C)2017 STADENN PROD. – MANCHESTER FILMS – GAUMONT – France 2 CINEMA

こういう雰囲気を大好物としている自分はぼーっと眺めているだけでもうっとりしてしまうのですが、本作にはこのノスタルジックな雰囲気にファンタジーの風を送り込む存在が。それはエドゥアールの作る仮面です。
原作者であるピエール・ルメートルは彼の仮面をアフリカやオセアニアの国々のものをイメージして執筆していたようですが、監督と主演を兼任するアルベール・デュポンデルはそれをより視覚的に映えるようアレンジ。
しかしこれには単に絵的な問題だけでなく、顔を隠すために存在するはずの仮面が逆にエドゥアールの心情を色濃く伝えるツールとなっていたり、戦争への痛烈な風刺となっていたりと、物語を味わう上での重要な鍵になっていたようにも思いました。
物語の内容は国や戦争を相手にした大博打…ともいえる豪快なものなのですが、1920年代パリの雰囲気とエドゥアールの作る仮面による繊細な調和が物語に華を添えていましたね。
権力者相手に大立ち回り…だが?
本作のメインストーリーは帰還兵アルベールとエドゥアールによって繰り広げられる戦争記念碑建立の架空事業。
戦没者が称えられ、帰還兵には厳しい世間に疑問を抱いた彼らは国や権力者に対し復讐ともいうべき詐欺を働くのです。
精巧なデッサンをもとに如何にもありそ~~~なカタログを作ってフランス全土に発送し、発注と入金を同時に済ましてもらうシステムで無から金を生み出していく様は痛快極まります。
しかしそれゆえに気になったのが話があっちこっち行き過ぎて複雑化していること。
原作の話をどう取捨選択していくか、どう再構築していくかは映画化していく上で避けられない問題だと思いますが、もう少し話の展開が整理されていたら、より集中しやすいものに仕上がっていた気がします。
ハイクオリティな戦争シーン
この映画においての戦争とは物語の肝となる重要な要素。
アルベールはそれによって失職し婚約者にも逃げられていますし、エドゥアールにおいては顔の下半分を抉られて、その後思いつく詐欺の動因にもなっています。
そのためなのか物語の序盤に映される戦争のシーンでは飛び交う弾丸や倒れゆく兵士、地を穿つ爆撃にそれを受けて巻き上がる砂埃など、決して映画的な誇張などではない臨場感を感じましたし、
長引く戦闘に戦意消失した兵士たちの沈鬱な雰囲気や、そんな彼らがプラデルの奸計1つで仇討ちに駆られていく様子など人間のリアルな心の動きを捉えているようにも思いました。
全体として見ると物語の約10分の1ほどしかないシーンではありますが本物の戦争映画にも引けを取らないクオリティを持っており、製作陣の真摯な映画づくりが見て伺えるものとなっていました。
数奇な運命の巡り合わせ
本作のタイトルである『天国でまた会おう』という言葉ですが、こちらは物語の終盤に一度、エドゥアールが言及するのみとなっています。
しかし僕はそのあとのシーンで憲兵が語る衝撃の事実を聞いたとき、ひょっとしてこの言葉は彼(憲兵)のものなのではないか…と考えたんですよね。
既に鑑賞された方は分かると思うのですが序盤で生き埋めになったアルベールと彼をそのような状況に貶めたプラデルの最期など、作中には数奇な運命の巡り合わせとも言うべき出来事が多発しており、その最後を締めるのがこの憲兵による告白という形になっています。
ということは偶然取調べを行った詐欺事件の犯人が息子の死の真相について知っていただけでなく、知らず知らずのうちに仇討ちまで果たしてくれた人物だったという信じがたい巡り合わせのように、
いずれ向かう広大な空の国でも運命が2人を引き寄せてくれることを願う父としての憲兵の思いがこの『天国でまた会おう』というタイトルとして付けられたのではないかなと。
原作を読んでいないため詳しくは分からないのですが、ミステリー作家として名を馳せるピエール・ルメートルならこういう感動的なプロットを用意できるかもしれないですよね。
評価
1920年代パリの雰囲気やエドゥアールのつけている仮面からはリアルとファンタジーの絶妙な融合を感じさせ、
途中こそ話がブレてあっちこっち行ってしまってる感はあったものの、色んな巡り合わせを感じさせるような話の構成やクライマックスで力を発揮するタイトルの意味など最終的には仕上がりの良さを感じさせた本作。
点数にして評価するならば…
81点!!
といったところでしょうか!なかなか高得点ですね!!
本記事を読んで何か感じられた方、ここはこうじゃない?など思われた方、ぜひぜひコメント欄にお寄せくださいね、お待ちしております!
ではでは!