「スチームパンク×特殊能力の世界観とか…大好物じゃないの」
またまたやってきました、ゲオ先行レンタルの作品。しかし、本作は今までのようなホラー映画とは毛色が違い、なんとスチームパンクの世界観を有してます。
それが何とも僕好みな世界観であったので遅ればせながら観てみました。ということで今回の記事では…
『アビゲイル クローズド・ワールド』
© KD STIDIOS LLC 2019
こちらの作品についての感想をお話ししていこうと思います。
また「評価」の項では僕なりの満足度も載せてますので、本作をまだ観たことがないという方はぜひ鑑賞の目安にしてみてください。
この記事の目次
- 映画『アビゲイル クローズド・ワールド』について
- 主なキャスト
- ストーリー
- 評価
- 感想(ネタバレあり)
- ディストピアな世界で紡がれる、最強の親子愛
- 名優の演技力でカバーされたストーリー
- VFX技術は高いのに…
- VFXといえば…
映画『アビゲイル クローズド・ワールド』について
- 監督
アレクサンドル・ボグスラフスキー - 原題/英題
Эбигейл/Abigail - 製作
2019年 ロシア
本作の監督を務めるのは、これまでもSF映画をメインに制作してきた経歴を持つアレクサンドル・ボグスラフスキー。
彼は以前、ゲオ先行のタイトルとして取り上げられた『トラップ・ゲーム』という映画の監督でもあります。
本作と同じくハイ・クオリティなVFX技術で描く超能力者たちのカジノ・ドリーム。序盤の爽快感は『グランド・イリュージョン』にも匹敵するレベルでした。
主なキャスト
- アビゲイル:主人公
ティナティン・ダラキシュヴィリ - ジョナサン:主人公の父
エディ・マーサン - ギャレット:政府の高官
アルチョム・トカチェンコ - ベール:特殊能力者のリーダー
グレブ・ボチュコフ
主人公のアビゲイル役であるティナティン・ダラキシュヴィリを含め、ほとんどがロシア人俳優で構成されてますね。
例外としてはアビゲイルの父親、ジョナサン役を演じたエディ・マーサンがいます。
主演作である『おみおくりの作法』では彼が孤独死した人たちを弔う民生係の男ジョン・メイを演じ、多くの映画祭にて主演男優賞を獲得しました。
本作で彼の演技に惚れたという人はぜひ観てみることをオススメします。
ストーリー
幼い頃、愛する父を政府に連れ去られたアビゲイル。
謎の病の感染防止のため、世界には特殊なシールドが張られ、父は感染者として連行された。
しかし、アビゲイルは特殊能力者たちとの出会いによって、政府が隠し続けてきた「謎の病」にまつわる恐るべき真実と陰謀を知る。

ゲオナビ vol.220 より
評価
『5/10点』
ロシア産の美麗なVFXのもとで描かれる「スチームパンク×特殊能力」の世界観。
物語としての見応えには欠けるけど、エディ・マーサンの演技だけは一級品だったなぁ…
以下、おおまかな評価の内訳となります。
ストーリー
2.0
配役・演技
2.5
演出(音楽/映像など)
4.0
企画・アイデア
2.0
感想(ネタバレあり)
© KD STIDIOS LLC 2019
※これより先はネタバレ要素を含む感想となります。鑑賞前の方はご注意を。
ディストピアな世界で紡がれる、最強の親子愛
製作国であるロシアでは『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』などの映画と並び、興行収入ランキング初登場第4位を記録したというスチームパンク・アクション。
国に広がる謎の病、科学者であった父ジョナサンの行方。アビゲイルはそれらの真相を追う中で能力者たちとの出会いを果たし、自らの身にも魔力を宿らせる。
しかし、実はそこに能力者でもあった父の犠牲が絡んでいて、アビゲイルは父から受け継いだ魔力と、その遺志を胸に、連行した能力者たちから魔力を奪おうと企むギャリックを破る…と、そういうお話でした。
スチームパンクという世界観だったり、父が残したヒントをもとに“ある真実”にたどり着くという構成だったりは、まるで『ヒューゴの不思議な発明』のようでもありましたね。
国家によって、国民が統制されているといった、ディストピアな雰囲気もまた良し。
そのような状況下でもって描かれる娘への深い愛情と、その愛に応える娘の奮闘。クライマックスは感動の親子ドラマに仕上がっていたように思います。

名優の演技力でカバーされたストーリー
うーん…でも、やはり全編を通して考えてみると、あまり面白いとはいえないな…というのが正直な感想。
ファンタジー映画ということでティーン向けの要素が強いのかもしれませんが、それにしても穴が多いし、どのシーンも一定のテンションで描かれてるのが盛り上がりに欠ける。
とくに穴でいうと、今現在、コロナ下を過ごす僕らからしたら、謎の病が広まる中、政府の声明を国民みんなで聞きにいくなんて行動が密以外の何にも見えないんですよね。
しかも、周囲にはがっちりと検査官の姿。感染を広めたいのか、抑えたいのかどっちなんだと思ってしまいますよ。
まぁ、のちに病の正体を知ると、その杜撰さの中にもヒントが隠れていた…と、そう考えるのもアリかもしれないですが。
けっこう世界観という蓑に隠れて説明不足が否めなかったり、あいまいなままに物語が進んでしまうことも多いように感じました。
さきほどのクライマックスのシーンだって、能力の開花条件とか、記憶のフラッシュバックをもって過去の父親からヒントを得る仕組みとかは、実はだいぶあいまいになってる。
それなのに僕が感動的と感じられたのは、ひとえに父ジョナサンを演じたエディ・マーサンの演技力ゆえ。
幼い娘のためにひょうきんな性格を装いながらも、その表情に思慮深さと、真心を湛えた彼が繰り出した「最強の魔法」による説得力があったからだと、そう思ってます。
VFX技術は高いのに…
魔法といえば、本作における魅力のひとつに高いVFX技術がありました。もはやロシア映画といえば…なところはありますが、それは本作でも遺憾なく発揮されてる。
巨大なシールドを突破していく飛行艇などは男のロマンでしょう。欲をいえば、もっと種類を、もっとシーンをって感じですかね。
魔法においては使う魔導器によって効果が変わるという設定なのに、攻撃型以外はあまり作中に出てこない。そして、その攻撃型すらも放つ光線にはバリエーションがない。
なんかこういうところがすごくもったいないな…と感じられたのでした。
中東にルーツがありそうな薬屋や、健忘症の爺さん、無口で髪型が観葉植物のルリデンみたいなヤツ…と色んなキャラがいた本作。
しかし、そのどれもが頭数を揃えただけにしか思えないキャラ描写だったので、それぞれに得意な魔法があるとか、そんな絡ませ方をしてもよかったのでは…と思います。
技術はあるのに、魅せ方が悪い。これほどもったいないことはないですね。
VFXといえば…
感想としてはここまでなんですが、本作でルリデン男を演じたリナール・ムハメトモフ。
彼がメインキャストのひとりとして出演しているロシアのSF大作『アトラクション -制圧-』の続編が日本でも公開されるようです。
その名も『アトラクション -侵略-』。前作はVFXの美しさでもってB級ながらに高い評価を受けた作品です。気になった方はセットで観てみるのもいいんじゃないでしょうか。
…ということで今回はここまで。ご意見、ご感想などはコメント欄の方へよろしくお願いします。ではでは。