その“9分間”に目を背けるな。『アレックス』ネタバレ&感想批評 

その“9分間”に目を背けるな。『アレックス』ネタバレ&感想批評  photo 0

 

こんにちは、とあるです!

 

今回、お話しするのは、ギャスパー・ノエ監督の映画

 

アレックス

 

(C)2002 Alliance Atlantis Communications

 

です!!!

 

映画について、ほかの方のブログやNEVERまとめなどで、

オススメアクション20選!

恋人と別れた時に観たい映画10選!

みたいに感じに紹介されているの、よく見ますよね。

 

僕もよく映画選びの参考にしているのですが、

今作は鬱映画まとめを見ているときに知った作品です。

 

鬱映画、胸糞悪い、観なけりゃよかった。ってのは、あくまで記事を読んでもらうための売り文句、映画の簡単な形容でしかないと思っています。

 

人間の内面をこれでもかと深く描いている作品が多いので、そういうのに触れられるのが好きなんですよね。

 

さて前書きはここまでに、さっそく内容に入っていきましょう。

 

この記事の目次

  1. ストーリー
  2. 予告動画
  3. ネタバレ
  4. 感想&レビュー
    1. 視覚、聴覚
    2. “9分間”
    3. 逆時系列
    4. 三者三様、しかし同質
  5. 最後に

ストーリー

 

 

ある男を探してゲイクラブへ押し入る2人組。

彼らは男を見つけ出すと凄惨な暴力を加える。

発端はあるパーティの夜。

マルキュスは会場に残り婚約者アレックスを一人で帰してしまう。

その直後、アレックスはレイプに遭い、激しい暴行を受けてしまうのだった。

自責の念に駆られるマルキュス。

彼は友人でアレックスの元恋人のピエールとともに犯人探しを開始する。

やがて、女装ゲイ、ヌネスを探し出した2人は、ヌネスからついにテニアという男の名を聞き出すのだった。

 

アレックス公式サイトより

 

予告動画

 

 

ネタバレ

 

※この項を飛ばして感想&レビューが読みたいという方は、

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感想&レビューを読む

 

 

※本作は物語の時系列が逆に進行していきますが、ネタバレの都合上、本来の時系列に直して書いてあります。

 

アレックス(モニカ・ベルッチ)の生理は遅れていました。

 

彼氏であるマルキュス(ヴァンサン・カッセル)との情事のあと、そのことを打ち明けたアレックスは、それがただの生理不順ではないのではないかと疑っていたのでした。

 

そしてその答えは彼女が妊娠検査キットを使ったことによってすぐに分かります。

 

キットが示していたのは陽性。

アレックスは妊娠していたのです。

 

その“9分間”に目を背けるな。『アレックス』ネタバレ&感想批評  photo 1

アレックスは喜びの表情を浮かべますが、それと共に一抹の不安を感じていました。

 

マルキュスはアレックスと、その元彼であり2人の共通の友人ピエール(アルベール・デュポンテル)の3人で、パーティに参加する予定を立てていました。

 

そのパーティに向かうため地下鉄に乗った3人。

 

アレックスを満足させているマルキュスに対し、自分はダメだったと卑屈になるピエールは、何がダメだったのか、どうすればよかったのか、アレックスに問い詰めます。

 

ピエールは未だにアレックスに対し未練を抱いているのでした。

 

会場に着いた3人。それぞれは思い思いにパーティを楽しみます。

アレックスは女友達と踊り、ピエールはその様子を1人眺めて、マルキュスは誰彼構わず女性に絡んでは、ヤクに手を出しハイになるといったように。

 

その様子に気づいたアレックスはマルキュスに対し、ハメを外しすぎだと怒り、彼の制止も振り切って、1人でパーティ会場をあとにします。

 

その後、帰路に着くアレックスは、1人で地下道を歩いていたところをある男にレイプされてしまうのですが、それをマルキュスらが知るのはパーティ会場から帰る道中。

無惨な姿となって搬送されるアレックスを見てからでした。

 

警察に聴取を受けるも上の空のマルキュスとピエール。

 

そんな彼らの前にチンピラ2人組がやってきて、報酬をくれるなら犯人を探そうと取引を持ちかけます。

マルキュスはそれに応じて、取引は成立。

 

その後レイプ現場に居合わせた女装の売春婦ヌネスから、犯人の名前がテニア(ジョー・プレスティア)であり、ゲイの盛り場であるクラブ「レクタム」にいる男だという手がかりを聞き出します。

 

復讐を良しとしないピエールの制止も聞かず、マルキュスは停まっていたタクシーに乗り込み、運転手にレクタムに行くよう伝えますが、運転手は場所を知りません。

 

焦りと怒りで我を忘れているマルキュスは次第に運転手と口論となり、タクシーを強奪してしまいます。

道行く人々に聞きながら進んでやっと、目的のクラブであるレクタムに辿り着くのでした。

 

レクタムの店内では赤く暗い照明に照らされて、無数の男達がまぐわっています。

 

ピエールは、これ以上行くと引き返せないことを再三マルキュスに忠告しますが、アレックスの復讐に駆られているマルキュスは、全く聞く耳を持ちません。

 

情事に誘う手を払い除けつつ、

「テニアか?」「お前がテニアか?」

と一人ひとり声をかけて進むマルキュスは、扉の近くにもたれかかっている2人組にも同じように尋ねます。

 

しかし2人組は聞いているのかそうでないのか、曖昧な返答を繰り返します。

 

そのうち、1人が無意味な応酬に呆れて場を離れようとしたところ、業を煮やしていたマルキュスがその男を追いかけて押し、殴り合いの乱闘に発展します。

 

マルキュスは床に押し倒され、腕をへし折られますが、男はそれでは飽き足らず、彼を犯し始めようとするのでした。

 

するとそこに消火器を持ったピエールが現れ、消火器の底で男の頭に一撃を見舞います。

そして男の顔がぐちゃぐちゃに崩れても尚、アレックスがそうされたのと同じように、繰り返し殴り続けるのでした。

 

その様子を楽しむじゃじゃ馬たちの中に、殴られた男の片割れがいました。

驚きとも嘲りとも取れる表情で事態を眺めていたその男こそ、マルキュスが復讐しようとしていた相手テニアだったのです。

 

警察や救急が到着したレクタムからマルキュスが搬送されていきます。

手錠をかけられたピエールも同じ車両に乗せられ、マルキュスの顔をじっと見つめます。

 

レクタムの上の階では、同監督作品『カルネ』『カノン』の主人公である肉屋が、

「時は全てを破壊する。」

とすべてを悟ったかのように、友人に語っていました。

 

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感想&レビュー

 

視覚、聴覚

 

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今作で特徴的だなと思ったのは、カメラワークや、BGMです。

 

クラブの中を奥へ奥へ進んでいくシーンでは、早く進んだり、急に振り返ったりとグラグラとしたカメラワークで進むことから、登場人物とともに彷徨い歩いているような感覚を持ちましたし、

 

常に響き渡るブワァーン…ブワァーン…という鈍いアラームのようなBGMが、今置かれている状況の異常性をひしひしと感じさせます。

 

そしてその強烈な体験が、カメラワークやBGMが安定していく中盤以降も、遅効性の毒として観ている側の脳に回り、ジワジワと精神を蝕ばむように思いましたね。

 

“9分間”

 

この映画について話す上で欠かせない場面といえば、9分間のレイプシーン。事の始まりから終わりまで、タブー化して目を背けがちなレイプというものに正面から向き合い映像にしています。

 

これには当時、カンヌ国際映画祭で上映された時にはブーイングや途中退席が相次いだそうですが、流血表現なども多くなく、特にグロテスクという訳でもありません。

 

それでもアレックスを演じたモニカ・ベルッチの真に迫る演技には目を背けたくなるほどのリアリティを感じました。

 

人によっては観続けられないほどの嫌悪感を抱くかもしれないですし、特に女性はこういう性暴力の事件の場合に多くがされる側になってしまうことから、このシーンの恐怖をより強く感じるかもしれません。

 

逆時系列

 

今作は時系列が逆に進行していくので、このシーンの前にはアレックスがレイプされる前の様子が描かれていくわけです。一応、動画としては幸せなアレックスの様子が映し出されて終わりを迎えるのに、これをハッピーエンドだとは誰も感じないでしょう。

 

様々なシーンを思い出しては、

 

何一つ救われねぇ…

 

というなんとも言えない後味の悪さを残します。

 

動画的な終わりと中身との対比という面で、この逆時系列で進むストーリーの描き方は話をより引き立たせているという感想を持ちました。

 

 

逆に言えば、後半はこれから起こることを知っているが故の気持ち悪さを味わう場面でもあるため、物語全体としての盛り上がり的には尻すぼみのように感じるかもしれません。

 

三者三様、しかし同質

 

この映画を観ていて自分は、レイプ犯テニア、復讐に燃える婚約者マルキュス、未だ好意を捨てられない男ピエールの3人に対し、ある1つの考えを持ちました。

 

それは「アレックスを対等な人間として扱った人物は一人もいない」ということです。

 

本作を観た方やネタバレをご覧になった方は、少し違和感を感じるかもしれないですね。

 

テニアはまだしも、マルキュスとピエールはどういうことなんだろう?って。

 

マルキュスの場合、その理由はパーティーの様子などからあげられます。

 

彼は様々な女性に手を出したり、ヤクで遊びまくっていたり、到底婚約者とは思えない行動をしています。

また自らの性欲のまま、計画性のないセックスを行っていることなどから、アレックスに対しセフレの延長線のような扱いをしているとも言えるのではないでしょうか。

 

ピエールの場合、アレックスのことを深く愛しているように見えることから、マルキュスよりも彼女を対等に扱っているように見えます。

 

しかし地下鉄に乗るシーンでは、アレックスが自らとのセックスで1度も絶頂に達しなかったことの理由や改善点を執拗に聞いています。

 

これはあまりにもデリカシーが無い質問で、

ピエールはセックスという行為や絶頂に達するということを1つの現象として捉えた、独りよがりな考えを持っているのではないかと感じました。

 

これは真にアレックスを思っている人のする言動ではないと僕は思います。

 

テニアがしたことは人権を踏みにじった行為で、到底許されるべきことではありませんが、このようなことからマルキュスやピエールの中にも、潜在的な女性軽視があったのではと思いました。

 

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最後に

 

暗い…救われない…だけどそれが、イイ。

観終わったあとに、ああぁ~~~……ってなる映画が好きなんですw

 

本作はそんな自分の期待にばっちり応えてくれました!!

おすすめの鬱映画あったら、教えていただけると嬉しいです、コメント待ってます!!

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