一丁の拳銃が男にもたらしたものとは…映画『銃』ネタバレ&感想レビュー

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こんにちは、とあるです!

 

今回お話しするのは村上虹郎主演の映画、

 

 

(C)吉本興業

 

です!

 

原作は芥川賞作家である中村文則の同名小説『銃』であり、彼のデビュー作だそう。

 

最近では同氏の『去年の冬、きみと別れ』や『悪と仮面のルール』などが次々と映画化されていることから、個人的に気になっていた小説家さんなのですが、今回そんな彼のデビュー作が公開されるということで、さっそく観に行ってきました!

 

この記事の目次

  1. ストーリー
  2. 予告動画
  3. ネタバレ
  4. 感想&レビュー
    1. モノクローム
    2. カラー
    3. BGMが…
    4. リリー・フランキー
    5. エンドロール
  5. 最後に

ストーリー

 

 

ある日、雨が降りしきる河原で一丁の拳銃を偶然拾い、銃を手に入れたことで、トオルの心は言い知れぬ高揚感を覚えるようになっていく。

大切に家に保管してある銃を持ち歩き、街に出る。

その緊張とスリルはトオルを満足させた。

トオルは同じ大学のヨシカワユウコにも興味があったが、いつしか銃の存在感がトオルの中で圧倒的な位置を占めるようになっていく。

そんなある日、トオルのもとに刑事が突然やってくる。

 

映画.comより

 

予告動画

 

 

ネタバレ

 

※この項を飛ばして感想&レビューが読みたいという方は、

下のボタンを押してください。

 

↓↓↓↓↓

 

感想&レビューを読む

 

 

(ストーリーの項の続きから)

 

応対に出たトオル(村上虹郎)に対して刑事(リリー・フランキー)は、昨晩近くの公園で猫が銃殺される事件があったために付近の家を訪ねているのだと言います。

 

トオルは昨晩、銃を試してみたい欲求に駆られて公園で見つけた猫を殺していました。

 

トオルは緊張しつつも、

「猫が殺されたくらいで訪ねてくるんですね。」

と返します。

 

すると刑事は猫の体内に入っていたのが荒川で起きた事件の現場から盗まれた銃の弾であること、その捜査のために来たことを明かすと、トオルが付近を走っている姿を近隣住民が目撃しているため詳しく話が聞きたいと言って部屋に無理やり入ってこようとしました。

 

部屋には銃があるため絶対に入れてはいけないと考えたトオルがそれを拒否すると、話の続きは近くの喫茶店ですることになりました。

 

喫茶店に着くと刑事はトオルを犯人と疑っている物言いで話を進めます。

 

証拠がないだろうとトオルが反論すると、刑事は猫から弾が見つかったのはカマかけだと明かしたうえでトオルの態度のおかしさを指摘しました。

 

突然押しかけて猫が死んだだの突拍子のないことをいうのに興味をもって話を聞いているところ。

何か話せば答えてくれるが、その答えがどうもふわふわとして掴みどころがないところ。

しきりに証拠を尋ねてくるところ。

 

トオルが動揺を隠そうと理論的に話そうとしていたのが、すべて裏目に出ていました。

 

刑事は、

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「人間を殺すとね、不思議なことかもしれませんが、普通の理性ではいれなくなるようですよ………まだ若い君の人生を棒に振ることは無い。今すぐ銃を渡すか、どこかに捨ててしまいなさい。これはあなたのためだ。」

と言い去っていきました。

 

銃を手に入れたことによって自信に満ちていたトオルの生活は、突然の刑事の来訪によって壊されました。

 

トオルはそのストレスを、交際を始めたばかりのユウコ(広瀬アリス)や合コンでゲットした行きずりの女にぶつけます。

2人はその変化に戸惑い、トオルを突き放しました。

 

それによってさらに追い詰められ、精神的な余裕をなくしてもなお、トオルの銃を使いたいという欲望は大きくなっていきました。

そしてついに彼はその銃を人に向けて使うことを決心します。

 

ターゲットは隣に住む女性。

彼女はイライラするとすぐに自身の子どもにぶつけていました。

虐待は連日続き、彼女の怒鳴る声と子どもの泣き喚く声はトオルの部屋にも響いてきていました。

 

かつて母親に捨てられた過去を持つトオルは、

彼女を殺せば子どもは虐待から解放される、

彼女は殺してもいい存在だ、

と考え、計画を練り始めました。

 

それから数日たったある日、ユウコから連絡が入り、先日のことについて話し合うことになりました。

 

喫茶店で待っていたユウコはやってきたトオルに対して、

「もともと何考えているかわからないけど、今はもっとわからない。何かあったの?」

と聞きます。

 

トオルは、

「どうでもいい。」

「何でもいい。」

と繰り返し、店を飛び出しました。

 

しばらく歩くとユウコからの着信がありましたが、トオルは携帯を道に投げ捨てて家に帰りました。

 

それからしばらくして、計画を実行に移す当日の夜となりました。

 

ターゲットの女性が日ごろよく通る道の近くに身を潜めたトオルは、やってきた彼女に銃を向け、撃鉄を下げます。

しかしトオルは彼女がすでに射程範囲内にいるも関わらず、手が震えて撃てません。

 

信号を渡り離れていく女性が、自分を施設に預け足早に去っていく母親に重なったトオル。

ついに撃つことができなかった彼は地面に横たわります。

 

その時、トオルは銃を手放すことを決意しました。

 

そう決めてからというものトオルの生活は少しずつ平穏を取り戻し、精神的にも安定していきます。

 

刑事の言うとおりに銃を捨てようと考えたトオルは、ばれないように遠くに捨てに行こうと電車に乗り込みます。

 

するとしばらくした時、トオルの隣に男がやってきて席にどっしりと座りました。

 

男は車内にも関わらず電話をしており、周りに遠慮する様子もなく大声で喋っています。

苛立つトオルはしばらく我慢していましたが、ついに男から携帯を奪い、投げ捨ててしまいました。

 

そしてトオルはおもむろに立ちあがると、ポケットに入っていた銃を取りだして男に向けます。

男はその銃を見ておもちゃだと思ったのか、自らトオルの手を引き寄せては、銃を口に咥えておちゃらけました。

 

それを見たトオルは迷うことなく引き金を引きました。

男は床に倒れこみ、その頭から流れ出た血は車両の床を覆っていきます。

 

何故撃ってしまったのか分からない。

 

トオルはこの状況を早く終わらせようと自殺を図ります。

ポケットに入れてあった残り1発の弾を弾倉に入れようとしますが、震えた手ではそれが入りません。

 

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「おかしいな。」

 

「もう少しなんだけどな。」

 

トオルはそう呟きながら弾を落としては拾い上げ、落としては拾い上げを繰り替えしました。

 

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感想&レビュー

 

モノクローム

 

本作のほぼ全編モノクローム映像で進行するのですが、その試みがいいように作用したんじゃないかと感じました。

 

物語がモノクロームで映し出されるということは、主人公のトオル自身がその生活に味気無さ、物足りなさを感じているようにも取れますし、かつてのフィルムノワール(虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画)が白黒だったことから、人生を映画と同じ虚構のように感じている、という表現なのかなとも思いました。

 

そう考えるとより主人公の内面を考えながら観ることができて良かったです。

 

また本作に出てきた銃は、フレームが銀色のコルトローマンなのですが、(銃に詳しくないのでモデルまではわかりません…画像は参考までに)

 

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モノクロームであることによってこの銀のフレームに濃淡が生まれて、銃の物質的な重みをより強く感じましたし、非日常の物体としての存在感、手に取りたくなるようなオーラを放っているように感じられましたね。

 

カラー

 

前項で書いた通り、本作は“ほぼ”モノクロームです。

 

しかしラスト、捨てようと思っていた銃で電車の乗客である男を撃ち殺してしまったシーンからは一転、カラーになるんですよね。

 

流れ出たが床に広がる。虚構のような人生に、現実が流入していく。

 

トオルはここで初めて、現実を直視したように思います。いろんな考えのできる表現方法で好きですね。

 

BGMが…

 

モノクロームの映像表現で物語への没入感を高めてくれたように感じた本作でしたが、BGMについては少しそれを邪魔しているように感じました。

 

人を殺すという意思を固めたシーンでは、今までの静かな欲望が露わになることを壮大な音楽によって表現したかったのかもしれませんが、それは主人公の行動から見ればわかること。

 

わざわざ音を出さなくても、無音にこそ表現できる怖さがあるのになぁ…と思ってしまいました。

 

リリー・フランキー

 

トオルが興味本位で猫を撃ち殺した翌日、家に訪ねてくる刑事をリリー・フランキーが演じているんですが、この人が刑事なら自分はすぐ罪を認めますねw

 

何もかも見透かされているようで怖い…。

 

その時のトオル演じる村上虹郎の演技も、本当に隠し事をしているように感じるほど自然なものでした。

 

エンドロール

 

本作のエンドロールには音楽がありません。

 

代わりに流れているのは列車の車輪がレールの継ぎ目を通るガタンゴトンという音、それに次の駅を知らせる車内アナウンス。

 

そう、ラストシーンでの出来事の続きなんです。

 

出来事が出来事なだけに、その無機質な音が物語の余韻を感じさせるいい表現でした。

 

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最後に

 

自分は原作未読なので観終わったあとに調べてみたのですが、あらすじや結末に大きな変更などされておらず、比較的忠実に作られた作品みたいです。

 

そのため原作のファンも納得の出来だったのではないかな、と思いました。

なにより脚本を見た中村文則さん自身が驚くほど見事だ、と語っていたそうですからね、さすが武正晴監督。

 

これがデビュー作ってことでさらに気になったので、ほかの映画化作品も観て、小説の方も合間合間に呼んでいこうと思います!

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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