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【ネタバレ感想】映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』:恐怖よりも福祉の重要性を感じる

ホラー/スリラー
(C)BILL KENWRIGHT LTD, 2019
原題:The Fanatic 製作:2019年 アメリカ (C)BILL KENWRIGHT LTD, 2019

「サインが欲しかっただけなのに…」失意から始まる無自覚の犯行をジョン・トラボルタ主演で描くストーカー・スリラー。

トラボルタが『ジョーカー』のホアキン・フェニックスとは異なる角度から魅せる”スターへの執着”、好奇心と表裏一体になっているその狂気に注目してみてほしい一作でした。

※以降は作品紹介や詳しいあらすじ、ネタバレ要素ありの感想を綴っています。


トータル満足度:6.0

評価 :6/10。

ストーリー「2.0」/演技「4.0」/企画・アイデア「3.0」/演出(映像・音楽など)「2.5」/エモーションの震度「3.0」

※満足度・5つの内訳の見方と基準

スタッフ&キャスト

監督

  • フレッド・ダースト
    監督作:映画『奇跡のロングショット』(2008年)

キャスト/役名

  • ジョン・トラボルタ/ムース
    役どころ:映画オタク、ダンバーのおっかけ
    出演作:映画『パルプ・フィクション』…ビンセント・ベガ役(主演)


  • デヴォン・サワ/ハンター・ダンバー
    役どころ:俳優、妻とは不仲の身
    出演作:映画『ファイナル・デスティネーション』…アレックス・ブラウニング役(主演)


  • アナ・ゴーリャ/リア
    役どころ:ムースの知人、パパラッチ

予告編(字幕版)

ジョン・トラヴォルタが激ヤバなストーカーを怪演!『ファナティック ハリウッドの狂愛者』予告編

ストーリー

ハリウッド大通りでパフォーマーをしながら日銭を稼ぐムースは大の映画オタク。人気俳優ハンター・ダンバーの熱狂的なファンである彼は、いつかダンバーからサインをもらうことを夢見て、さえない毎日を送っていた。だが、念願かなって参加したサイン会で思いがけず冷たくあしらわれてしまったことから、ムースの愛情は次第に歪んでいく。

引用:映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』公式サイト

パパラッチの友人リアから情報を得て、ダンバーの自宅を何度も訪れるようになるムース。やがて庭への侵入を試みた彼は誤ってメイドを殺害してしまうが、好奇心には逆らえず、その日は彼の自宅内で楽しい時間を過ごす。

しかしある時、ムースは自身の行為が「ストーカー」であるとダンバー本人やリアから非難されて憤慨。自らをただの「ファン」だと考えるムースはダンバーを彼の自宅のベッドに縛りつけ、ゆっくりと対話しようとするが、ダンバーには彼が殺人鬼にしか見えなかった。ダンバーは隙をみて反撃し、ムースに重傷を負わせる。

その後、泣きじゃくるムースを家から追い出すダンバーだが、直後にやってきた警察によって逮捕されてしまうことに。容疑はメイドの殺害。ムースの犯した罪だった。

当の本人であるムースは片目を失明し、指先こそ不自由になりながらも、いつもの生活へと戻っていく。

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感想(ネタバレ要素あり)

(C)BILL KENWRIGHT LTD, 2019

モーガン・フリーマン演じる黒幕とのヒリつく攻防(+激太りしたブレンダン・フレイザー)が見どころだった『ポイズン・ローズ』をはじめ、近ごろはハードボイルド一辺倒な作品ばかりとなっていたジョン・トラボルタの主演作。

ポマードと硝煙の香りただようウン十年代風アクション、それらも悪くはないです。むしろ好きな部類なんですが、そればっかりなので正直、飽きが…。その点において、この『ファナティック ハリウッドの狂愛者』は心から新鮮な気持ちで鑑賞できる映画でした。

この映画でトラボルタが演じたのは俳優ハンター・ダンバーにゾッコンな映画オタク、ムース。裏話として当初は彼がダンバー役に起用されていたものの、本人たっての希望によりムース役になったという経緯があったそうです。

観終わってからの感想でいえば、この判断は間違っていませんでした。最適解、そうともいえます。『ヘアスプレー』でビッグなママさん役を好演したときと同じく、彼の演技力の幅を再確認させられる役どころだと感じました。

サイン会ではダンバーに私用を優先され、邪見に扱われるムース。それでも彼はダンバーのその態度に幻滅するわけでもなければ、なにか事情があったのかもと推しはかることもできずに、貰えなかったサインを求めてオフの日の彼に会いに行ってしまう。

作中にはワンシーンだけムースの過去を映した場面がありましたが、彼にはおそらく幼いころから自閉スペクトラム症の気があり、適切な育児を行わなかった両親によって、それが強化されてしまったようにもみえます。

しかし、それはそれとして、ダンバーとのやりとりを事前に想定し、よりよい受け答えができるように頭をひねる姿や、のちにいざ彼と対面するや否やダンバーの肩辺りをガン見しだして“適切なコミュニケーション”の再生に手一杯となってしまうムースの姿はじつにユーモラスなものでした。

出で立ちの面でも肩甲骨にビッタリ張りつく高さにまで吊りあげたリュックを背負っているなど、トラボルタは「変わっているけど嫌いになれない、一種の愛くるしさをも持つ人物」としてムースを捉え、演じていたように感じます。

背中にぴったりフィットちゃん、なムース。画面越しに観ているぶんにはかわいい。(C)BILL KENWRIGHT LTD, 2019

そういえばこんな高さ、僕も正しい着用の仕方がわからずにしたことがありますが、歩いても中の荷物がズレなくて意外と楽なんですよね。ただ、傍目にはおかしい。こういうところでも他人の目より自分の居心地の良さを優先してしまうムースの性格を表していたんでしょうか。

その後、ダンバーとの二度目の対面はというと、文字通りの門前払いで終わります。しかし、それでもムースはあきらめない。とうとう庭へと侵入し、外出中の家主、思いがけず殺してしまったメイドでもってガラ空きとなったダンバー邸をこれでもかと満喫していく。

オルガンガンガン陽気なムース、舌苔絶対除去するムース。ここで彼が無邪気ながらもブレーキのぶっ壊れた狂愛者ファンになっていくさま、もう微笑ましくは観られませんでしたね。人の神経を逆撫でする行為をこうも平然とやりとげるトラボルタには思わず「うはぁ…」というため息も出ました。もちろん、いい意味で、です。

公式サイトかどこかでムースのことを「ピュア」と表現した文章を読みましたが、ここまできたうえでそう捉えることはできませんでした。先の障がい+育児放棄によって社会性が育まれていない、幼い、とらぼっちゃんのままであるということがムースの恐ろしさに繋がっていたと思います。

しかし、そうなってくると…ですが、ラストにかけての展開はどうなんでしょう。自分としてはどっちつかずな印象でした。というのも、監督のフレッド・ダーストはムースというキャラで「恐怖」を覚えさせたかったのか、似たような境遇の人々への「福祉の重要性」を唱えたかったのか、ここがいまいち伝わらない。

終盤でのムースは周囲からストーカーとして非難されると、激昴したのちにダンバーを縛りあげては即返り討ちにあう。これに対して自分のなかには「自業自得だ」というムースへの気持ちと「お前もお前でやりすぎだぞ」とダンバーを諫めたい気持ちとが同居して、宙ぶらりんな心情になりました。

そう思ったのは終始、ムースに悪意がなかったから?ジェイソンなムースも(事情を知ってたら)かわいい。(C)BILL KENWRIGHT LTD, 2019

その後、階段から突きおとされ、幼児のように泣きじゃくるムースの姿を観ると「彼も彼で被害者なのに…」という思いが強くなっていったわけですが、それはそう思わせることが監督の狙いだったのでしょうか。

ダンバーがあのような行動をとったのも、単なる狂人と、ようやく反撃のチャンスが訪れた被害者としての構図で終わらせたくなかったから?…わかりません。

終わり方にしても「こんなもの警察が捜査を始めて2、3日もすれば、ムース捕まるでしょ」と思わずにはいられないし、途中でメイドが殺されてから数日間バレないのも現実的とは思えない。

なんかこう、小難しいこともやろうとするのもいいですが、トラボルタを使うなら幼稚性が凶暴性となっていくさまを細かい整合性を抜きにしてぶつけてくれたほうが、自分としては鑑賞後の満足感も大きかっただろうなと思う映画でした。

余談ですが、トラボルタは本作でまたまたラジー賞(ゴールデンラズベリー賞…その年のワースト映画を決める)を獲ってしまったとのこと。

トラボルタはハリウッドから狂愛を注がれていますね。好きだからこそイジメたい。なんか、そういうねじれた感情を彼には抱いてしまうので、この受賞については納得してしまいました。

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さいごまでブログをお読みいただき、ありがとうございました。

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